当センターにいらっしゃる外反母趾の患者さんにお話を聞くと、
母親や祖母が外反母趾という方がかなりいらっしゃいます。
彩さん(仮名)もお母様が外反母趾とのことでした。
ご自身も外反母趾で、靴を履いて歩いていると、親指の付け根の辺りが
ズキズキ痛くなります。
それを治したくて来院されましたが、外反母趾の角度は遺伝だから治らないと
思い込んでいました。
外反母趾は確かに生まれ持った遺伝的要素はあるのですね。
でも遺伝のせいだけではないのです。
もしすべて遺伝のせいなら、生まれた時から外反母趾があり、そこから
それほどの変化はしないでしょう。
しかし当センターに来られる方は、「最近急に角度が付いて来た」とか、
「若い頃はこんなじゃなかったのに」などとおっしゃいます。
つまり遺伝というよりは、日常の生活の中でどんどん変化しているのですね。
太った母娘が並んでいても、それを遺伝とはあまり考えないですよね。
多くは同じ食生活をしているから。
メガネをかけた母娘が歩いていても、目の悪いのを遺伝とはあまり思わないですよね。
そうなったのは、目の悪くなる生活環境に置かれていたからですね。
実は外反母趾も同じことで、日々の生活習慣で悪化していきます。
外反母趾の場合生活習慣というと、歩き方がそれに当たります。
足病医学の進んだアメリカなどでは、オーバープロネーション(過剰回内)
という間違った足や脚の使い方が外反母趾の原因だと言われています。
彩さんにこの事をお伝えすると、驚くとともに治るんだという希望が湧いて
来たご様子でした。
さて外反母趾は遺伝というより歩き方の問題ということは、正しい歩き方を
身に着ければ改善していくという事なのですね。
当センターでは、アメリカ足病医学に基づいて開発された『ゆるかかと歩き』
という足に負担のかからない正しい歩き方を指導しています。
この歩き方を習得することで、たくさんの外反母趾の方が改善に至っています。
遺伝ではなく、悪い歩き方のせいで外反母趾になったと知った彩さんも、
半年間の努力の結果、痛みだけでなく外反母趾の角度も、10度近く戻すことが
出来ました。
もし遺伝のせいだとあきらめていたら、角度の改善どころか痛みも取れなかった
かもしれません。
そして彩さんは学生時代にやっていたテニスを再び始めたそうです。
いつかまたやりたいと思っていましたが、外反母趾の痛みのため躊躇していた
のです。
痛みが取れたので、早速テニスを始めた彩さん、以前のようにはいかないけど、
スポーツするととにかく気分がいいと、笑顔で話すのが印象的でした。